公開日: 2023年9月5日

更新日: 2026年9月4日

顔に麻酔クリームを使う前に知るべき5つの注意点

顔に麻酔クリームを使う前に知るべき5つの注意点

顔にタトゥーを入れる際、施術時の痛みを抑える目的で麻酔クリームを検討する方もいるでしょう。

ただし、「顔にも塗れる麻酔クリームだから、どこにでも同じ量・同じ時間で使える」という考え方は適切ではありません。

 

顔には目・口・鼻などの粘膜に近い場所があり、眉周辺やまぶたのように薬剤が眼へ入りやすい部位もあります。

さらに、国内承認薬のエムラクリームでは、同じ面積・同程度の量を使用した試験では、手の甲や前腕に塗った場合と比べて、顔面に塗った場合の血中濃度が高い値を示しました。

 

この記事では、顔への麻酔クリーム使用を「使える場所/使えない場所」と単純に分けず、製品の適応、塗布部位、量・時間、アレルギーや中毒症状、彫師との事前確認という5つの観点から整理します。

 

顔に麻酔クリームは使える?まず知っておきたいこと

顔の皮膚に局所麻酔クリームが使用される医療場面はあります。

たとえば、日本の処方箋医薬品であるエムラクリームは、皮膚レーザー照射療法時などの疼痛緩和を効能として承認されており、顔面での薬物動態試験も行われています。

 

日本で承認されているエムラクリームの効能に「タトゥー施術時の疼痛緩和」は含まれていません。

また、海外製・個人輸入品を含む麻酔クリームは、成分・濃度・用法・使用できる部位が製品ごとに異なります。

重要:別製品の使い方をそのまま流用しない

エムラクリーム、リドカイン単剤、海外製の麻酔クリームなどは同じ製品ではありません。
「別の製品では○分だった」「他の人が顔全体へ使っていた」といった情報を、自分が使う製品へそのまま当てはめないでください。

 

顔に麻酔クリームを使う前に確認したい5つの注意点

顔に麻酔クリームを使う前に確認したい5つの注意点

ポイントは「強く効かせること」ではなく、使用する製品の条件を守り、顔の部位と皮膚状態を確認することです。

1.その製品が顔・予定部位への使用を想定しているか確認する

まず確認したいのは、成分濃度の強さではなく製品そのものの使用条件です。

顔への使用可否、1回量、使用時間、対象年齢、使用してはいけない皮膚状態などは、製品ごとに異なります。

 

米国食品医薬品局(FDA)は2024年、タトゥーやレーザー脱毛など美容施術前後の疼痛軽減をうたう一部の高濃度リドカイン外用製品について、皮膚からの吸収が増える使い方では不整脈、けいれん、呼吸障害などの重大な健康被害につながる可能性があるとして注意喚起しています。

 

「濃度が高い=顔で強く効いて便利」ではなく、顔に使用する前提の製品なのか、表示・説明書・処方内容を先に確認することが重要です。

2.目・口・鼻などの粘膜、傷・炎症のある皮膚を避ける

顔で特に注意が必要なのは、目や粘膜に近いことです。

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公開するエムラクリームの添付文書では、眼に入らないよう注意すること、損傷皮膚や粘膜には使用しないことが明記されています。

 

海外の一般用リドカイン製品でも、眼・口・粘膜との接触を避け、傷、擦過傷、水疱などがある皮膚へ使用しないよう記載されているものがあります。

 

眉・まぶた・目尻など眼球に近い場所、唇や口腔内、鼻の穴の内側などは、自己判断で塗布範囲を広げないでください。

3.量・塗布時間・ラップなどの被覆を自己判断で増やさない

局所麻酔薬は、塗る面積、量、時間、皮膚の状態、被覆の有無などによって吸収量が変わります。

「効きが弱そうだから多めに塗る」「長く置く」「ラップで密封すればよく効く」といった自己調整は避けてください。

 

PMDAが公開する薬物動態試験では、健康成人に同じ5g・50cm²を2時間密封塗布した条件で、手の甲や前腕に塗った場合と比べ、顔面に塗った場合のリドカイン・プロピトカイン血中濃度が高い値を示しました。

顔では「他の部位と同じ感覚」で増量しない

この試験結果だけで、すべての麻酔クリームが同じ吸収を示すとは言えません。
ただし、塗布部位によって薬物吸収が異なり得ることを示す重要なデータです。製品で定められた量・時間・使用方法を超えないことが基本です。

4.「赤み・ヒリヒリ」とアレルギー・中毒症状を区別する

麻酔クリーム使用後に赤み、白っぽさ、軽いヒリヒリなどが生じることがあります。

これらすべてがアレルギーとは限りません。

 

一方で、じんましん、強い腫れ、顔や喉の腫れ、呼吸困難などは即時型アレルギーを疑う症状です。

また、局所麻酔薬の過量吸収では、口周りのしびれ、耳鳴り、めまい、振戦、けいれん、意識障害、不整脈などの中毒症状が起こる可能性があります。

 

プロピトカインを含む製品では、まれにメトヘモグロビン血症が起こり、唇や爪が青紫色になる、息苦しい、頭痛、めまい、意識の異常などが現れることがあります。

 

症状の違いについては、麻酔クリームのアレルギー症状とは?ヒリヒリ・赤み・副作用との違いで詳しく解説しています。

5.麻酔クリームの使用をタトゥー施術前に必ず共有する

麻酔クリームを使用する場合は、予約時または施術前に彫師へ伝えてください。

ショップや彫師によって、麻酔クリームを使用した皮膚への施術方針や、施術前に除去しておくタイミングなどが異なる場合があります。

 

また、「彫師が塗ってよいか」という問題と「タトゥー施術そのものが医行為か」という問題は分けて考える必要があります。

2020年の最高裁決定では、当該事件におけるタトゥー施術行為自体は医師法上の医行為に当たらないと判断されました。

 

しかし、この判断から「彫師であれば処方箋医薬品を自由に使用・投与できる」と結論づけることはできません。

国内のエムラクリームは処方箋医薬品であり、PMDAの添付文書でも「医師等の処方箋により使用すること」とされています。

 

誰が塗るかを自己判断で一般化せず、使用する製品の区分、処方内容、医療機関・ショップの方針を確認してください。

タトゥーショップでの麻酔クリームについては、タトゥーショップで麻酔クリームを塗ってもらえるのかもあわせて確認してください。

 

顔の部位別|「安全・危険」の二択ではなく使用条件で考える

顔の部位ごとに「比較的安全」「中程度のリスク」といった形で単純に分類したくなりますが、実際には製品や皮膚状態によって条件が変わります。

そのため、顔の部位だけで安全性をランク付けするのは適切ではありません。

顔の部位別に確認したい麻酔クリーム使用時の注意点

※この図は「安全な部位・危険な部位」を順位付けするものではなく、部位ごとに確認したいポイントを整理したものです。

まぶた・目の周囲

確認したいこと:眼へ入る危険、涙や瞬きによる移動

考え方:眼への接触を避ける必要があります。眼球に近い範囲へ自己判断で塗らないでください。

唇・口周囲

確認したいこと:口腔粘膜への付着、舐める・飲み込む可能性

考え方:唇そのものや口腔内は皮膚と同じ扱いではありません。使用製品の粘膜への注意を確認します。

鼻周囲

確認したいこと:鼻腔内の粘膜へ入り込まないか

考え方:鼻の外側の皮膚と、鼻の穴の内側では条件が異なります。粘膜へ広げないことが重要です。

頬・額・あご

確認したいこと:傷、炎症、ニキビ、剃毛後の刺激など

考え方:「比較的安全」と決めつけず、健常皮膚か、製品がその部位へ使用できるかを確認します。

耳周辺

確認したいこと:外耳道・中耳へ入らないか

考え方:外側の皮膚と耳の穴の内部を分けて考えます。PMDA添付文書では中耳に入らないよう注意されています。

 

自宅でパッチテストをすれば顔への使用可否が分かる?

麻酔クリームを少量塗って自宅で反応を見ることを「パッチテスト」と呼ぶことがあります。

ただし、自宅で少量を塗ることと、医療機関で行うアレルギー検査のパッチテストは別物です。

 

製品に事前確認の方法が明記されている場合は、その説明に従ってください。

一方で、成分が分からない製品を自己判断で顔へ試したり、過去に局所麻酔薬で強い反応があった方が再度塗って確認したりすることは避けるべきです。

 

過去に麻酔薬で強い反応があった場合は、自宅で再び塗って確認するのではなく、医師へ相談してください。

 

使用後に異常が出たときの対処と受診の目安

麻酔クリーム使用後に異常を感じた場合は、まずそれ以上の使用を中止します。

皮膚表面に製品が残っている場合は、製品の説明に従って除去してください。

麻酔クリーム使用後に異常が出た場合の受診目安

呼吸困難、顔や喉の強い腫れ、けいれん、意識障害などがある場合は、通常の肌トラブルとして様子を見ず、速やかな救急対応が必要です。

局所の赤み・かゆみ・ヒリヒリ

製品を除去し、症状の変化を確認します。
強くなる、長く続く、発疹・水疱・強い腫れが出る場合は医療機関へ相談してください。

眼に入った

こすらず、十分な水で洗い流します。
痛み、充血、視界の異常などが残る場合は速やかに眼科などへ相談してください。

顔・喉の腫れ、呼吸困難

アナフィラキシーなど重いアレルギー反応の可能性があります。
救急対応が必要な症状です。

けいれん・意識障害・不整脈・青紫色の唇

局所麻酔薬中毒やメトヘモグロビン血症などの可能性があります。
自己判断で様子を見ず、速やかに救急対応を受けてください。

 

受診する場合は、使用した製品名、成分表示、塗った量、部位、使用時間、ラップ等で覆ったかを伝えられるようにしておくと役立ちます。

 

Q&A|顔への麻酔クリームでよくある疑問

Q

顔に麻酔クリームは使えますか?
A

顔に局所麻酔クリームが使用される医療場面はありますが、すべての製品を顔に使えるわけではありません。使用する製品の適応、説明書、塗布部位、皮膚状態を確認してください。
Q

頬や額なら安全ですか?
A

部位だけで「安全」と断定できません。傷、炎症、ニキビ、剃毛後の刺激など皮膚状態によって吸収や刺激が変わる可能性があり、顔では他部位より高い血中濃度を示した薬物動態データもあります。
Q

眉やまぶたのタトゥー前に使えますか?
A

眼に薬剤が入る危険があるため、自己判断で塗布しないでください。使用製品の説明と施術者・医療専門家の判断を確認する必要があります。
Q

長く塗っておけば麻酔効果も強くなりますか?
A

使用時間を延ばせば安全に効果が強くなるとは限りません。長時間使用、広範囲使用、損傷皮膚、被覆などは吸収量を増やす要因になり得ます。製品で定められた使用条件を超えないでください。
Q

顔へ塗る前に自宅でパッチテストをすれば安心ですか?
A

自宅で少量を塗る確認は、医療機関の正式なアレルギー検査とは異なります。製品に確認方法が指定されている場合はその説明に従い、過去に強い反応があった場合は自己再曝露せず医師へ相談してください。
Q

彫師に麻酔クリームを塗ってもらえますか?
A

タトゥー施術そのものについては2020年の最高裁決定で医行為に当たらないと判断された事例がありますが、それだけで処方箋医薬品の使用まで自由にできることを意味しません。使用製品の区分、処方内容、施設方針を確認してください。

 

まとめ|顔では「場所」より製品・皮膚状態・使い方を確認する

顔への麻酔クリームは、「目周りは危険、頬は安全」といった単純な部位ランキングで判断するものではありません。

使用する製品がその部位へ使用できるか、眼や粘膜へ入らないか、皮膚が傷んでいないか、量・時間・被覆を守っているかを確認することが重要です。

 

特に顔では、他の部位より薬物吸収が高くなる可能性を示すデータがあるため、「効かせたいから多く・長く」という自己調整は避けてください。

 

また、赤みやヒリヒリだけでアレルギーと決めつける必要はありませんが、呼吸困難、顔や喉の腫れ、けいれん、意識障害、唇の青紫色などは速やかな救急対応が必要な症状です。

使用前には製品情報を確認し、タトゥー施術前に彫師へ麻酔クリームを使う予定を共有しておきましょう。

 

KODAI イメージ
実務内容確認 KODAI 【TKTXサポート】

タトゥー施術に関する実務経験と知識をもとに、施術前の準備、部位ごとの特徴、痛み、デザイン、スタジオで確認したい内容等の実務面を確認しています。

 

参考・確認先