
「授乳中でも麻酔クリームは使える?」「使ったあと、赤ちゃんに母乳をあげても大丈夫?」「授乳まで何時間、何日空けたらいい?」と不安になる方もいるでしょう。
特にタトゥーや美容施術のためにTKTXなどのクリームを使用した場合、肌に塗った薬が母乳へ移るのか、次の授乳をどうすればよいのかは気になるところです。
授乳中に必要な判断は、使った製品の成分と量、塗った場所や皮膚の状態、赤ちゃんの月齢などによって変わります。
この記事では、授乳を中断せずに済む場合の具体的な時間の目安を先に示し、その目安がTKTXなどすべてのクリームに共通するわけではない理由と、使用後の注意点を解説します。

授乳中でも麻酔クリームは使える?使用後の母乳はいつから?
まず一般的な目安として、成分が確認されたリドカイン製剤を適切な条件で使用した場合、授乳を中断せずに続けられるケースがあります。
その場合の授乳のための待機時間は「0時間・0日」です。これは「中断不要」という医学的な説明を時間に置き換えたもので、すべての使用例を平均した待機時間ではありません。
ただし、この「0時間」をTKTXを含むすべての麻酔クリームに当てはめることはできません。特に複数成分の製品、使用量が多い場合、広い範囲や傷・炎症のある皮膚に使った場合などは、同じ条件ではありません。
逆に、「24時間空ければ必ず安全」「48時間なら誰でも安心」という一律の基準もありません。 TKTXの使用が心配な方は、製品表示と実際の使用状況を確認し、できれば使用前に医師・薬剤師に相談してください。
ポイントは「何日空けるか」を一律に決めるのではなく、待機不要とされる根拠がある製剤と、個別に確認が必要な製品を区別することです。
リドカイン製剤では「待機0時間(授乳中断不要)」の例がある
医療で使われる局所麻酔成分の一つに、リドカイン(Lidocaine)があります。
米国国立医学図書館の授乳と薬のデータベース「LactMed」では、リドカインの母乳中への移行量は低く、授乳中の乳児への影響は通常予想されないため、特別な授乳上の注意は不要と説明しています。
英国の授乳支援団体も一般的な局所麻酔後は授乳を通常どおり続けられると案内しており、こうした使用条件では授乳のために24時間や数日間待つ必要があるとはされていません。
ただし、これは成分と適切な使用条件が確認できる局所麻酔薬についての医学的な情報です。塗った薬が赤ちゃんの口や手に直接付着しないようにする必要もあり、使用量や成分が不明なクリーム、広範囲への大量使用、傷のある肌への使用には、そのまま当てはめられません。
国内のエムラクリームは、授乳の継続・中止を個別に検討する
国内の処方箋医薬品であるエムラクリームには、リドカインとプロピトカイン(Prilocaine)が配合されています。
2026年3月改訂の添付文書では、授乳中の使用について、治療の必要性と母乳栄養の利点を考慮し、授乳を続けるか中止するかを検討するよう案内しています。
また、LactMedではプロピトカインの授乳中の研究は限られるものの、乳房から離れた皮膚への局所使用で乳児に影響する可能性は低いと説明しています。
こうした医療用製品の情報を、別の成分や処方のTKTXへ置き換えて判断しないことが大切です。
TKTXの場合、「何日後から」と一律には案内できない
TKTXには複数のシリーズがあり、まず確認したいのは、手元にある実際の製品の成分名・含有量・使用上の注意です。
パッケージにある「55%」「72%」「100%」などの数字を、有効成分の濃度や授乳再開に必要な日数として読み替えることはできません。
TKTXについては、授乳を再開できる「平均24時間」「平均2日」といった根拠のある目安は確認できていません。 そのため、医療用リドカイン製剤の「待機0時間」も、TKTXにそのまま適用しません。
これから使用する方は、成分表示・塗布予定の範囲・量を伝えて事前に相談しておくと安心です。すでに使用した方は、実際の使用時刻や部位、授乳予定も併せて伝え、必要な対応を確認してください。

- 成分が確認できるリドカイン製剤(適切な医療使用)
- 授乳のための待機目安:0時間(0日)。 授乳を中断せず通常どおり続けられる例があります。ただし製剤ごとの注意事項と使用部位を守り、乳児が塗布した薬に直接触れないようにします。
- リドカイン・プロピトカイン配合などの医療用製剤
- 海外のエムラクリーム製品情報では、通常の治療量で授乳中の使用が可能とされています。一方、国内添付文書では継続・中止を個別に検討する扱いです。製品の指示を確認し、一律に待機日数を追加するものではありません。
- TKTXなど、成分・使用条件を確認できない製品
- 根拠のある共通の待機時間:設定できません。 「0時間」も「24〜48時間」も安全性を保証する目安にはできないため、現物の成分表示・量・塗布部位・時刻を伝え、必要に応じて個別に相談します。
授乳までの時間を考えるとき、何が影響する?
麻酔クリームは皮膚に塗る薬ですが、成分の一部が体内に吸収される可能性があります。
吸収の程度には製品の特徴だけでなく、使用した条件も関係します。
特に確認したいのは、塗った量と範囲、使用時間、皮膚の傷や炎症、ラップなどで覆ったかどうかです。
少量・狭い範囲と、大量・広範囲では条件が違う
腕の小さな範囲に使った場合と、背中など広い範囲に多量に塗った場合では、体内へ吸収される可能性のある量が異なります。
「いつもの使い方だから大丈夫」と決めず、どこにどの程度塗ったかを確認できるようにしましょう。
傷のある肌や長時間の被覆では吸収が増える場合がある
FDA(米国食品医薬品局)は、美容施術の前後に使われる一部の外用鎮痛製品について、傷や刺激のある皮膚、広い範囲、長時間、被覆を伴う使用で吸収量が増え、重大な健康被害につながるおそれがあると注意しています。
タトゥー施術で皮膚に傷がついた後の追加塗布と、施術前の傷のない皮膚への使用は同じ条件ではありません。
授乳中かどうかにかかわらず、自己判断で量を増やしたり、施術中に重ねて使ったりしないでください。
赤ちゃんの月齢や体調も伝える
生後間もない赤ちゃん、早産で生まれた赤ちゃん、黄疸など健康上の配慮が必要な赤ちゃんでは、授乳中の薬の相談で追加の確認が必要になる場合があります。
母親側の使用状況だけでなく、赤ちゃんの月齢・出生時の状況・現在の体調も医師・薬剤師に伝えてください。
乳房や乳首への接触にも注意する
授乳中の薬の影響は、母乳を介した成分の移行だけで考えるものではありません。
塗った薬が肌に残っていたり、赤ちゃんの口や手が塗布部位に触れたりすると、母乳とは別の経路で成分に接触する可能性があります。
乳首や乳輪、授乳時に赤ちゃんの口が触れる場所へ、タトゥー用の麻酔クリームを自己判断で使用しないでください。
胸や腕などに使用した場合も、赤ちゃんが塗布部分に直接触れないようにし、残った薬の扱いは製品表示と医療者の案内に従ってください。

すでに麻酔クリームを使った場合、どうすればいい?
使用後に授乳への影響が気になった場合は、まず使用した製品と状況を整理しましょう。
「いつ使ったか」だけでなく、次の情報があると医師・薬剤師へ具体的に相談できます。
- 製品の正式名称とパッケージに書かれた成分・含有量
- 塗った部位とおおよその範囲・量
- 塗り始めた時刻、拭き取った時刻、追加使用の有無
- ラップなどで覆ったか、傷や炎症がある肌に使ったか
- 赤ちゃんの月齢、早産・黄疸などの既往、現在の様子
- 使用後にすでに授乳したか、次の授乳予定はいつか
パッケージや商品ページの成分表示を写真に残しておくと、製品を取り違えずに相談できます。
次の授乳が近い場合は、そのことも伝え、授乳を続けるか、一時的な対応が必要か、必要ならいつ再開するかを確認してください。
すでに赤ちゃんへ母乳をあげた場合
すでに授乳したからといって、必ず赤ちゃんに影響が出るわけではありません。
ただし、成分や使い方が分からない製品の場合は、このページだけで影響の有無を判断することもできません。
使用した製品・量・授乳時刻・赤ちゃんの様子を伝え、小児科や処方医、薬剤師などへ相談しましょう。
赤ちゃんの呼吸や反応が普段と明らかに異なる、意識が低下しているなどの異常がある場合は、直ちに救急医療につないでください。
授乳の中断や搾乳は、必要性を確認してから
母乳中への薬の移行を心配して、自己判断で何日も授乳を中断したり、すべての母乳を搾って捨てたりする必要があるとは限りません。
国立成育医療研究センターは、多くの薬について母乳移行量は少なく、薬の使用を理由に必ずしも授乳を諦める必要はないと説明しています。
一方、一時的な中断が必要と判断された場合は、授乳再開の目安だけでなく、その間の赤ちゃんの栄養や母乳分泌をどう維持するかについても、医師・助産師などに相談してください。
授乳中に新しくタトゥーを入れることとは、別に考える
「麻酔クリーム使用後に授乳できるか」と、「授乳中にタトゥー施術を受けてよいか」は別の疑問です。
タトゥー施術そのものには、皮膚への傷、感染、インクに対する反応などの問題があります。
米国LactMedや授乳支援団体では、授乳中に新しいタトゥーを入れることの研究は十分ではなく、施術を授乳終了後へ延ばす考え方が紹介されています。
麻酔クリームについて使用可能と判断された場合でも、それだけでタトゥー施術全体の安全性が確認されたことにはなりません。
施術先で麻酔クリームが使用できるかについては、タトゥースタジオで麻酔クリームを使う際の確認事項も参考にしてください。
詳しい使用前の確認事項は、麻酔クリームの使い方と注意点にまとめています。
授乳中の麻酔クリームに関するよくある質問
一般的なリドカイン製剤では、適切な使用条件で授乳を中断する必要がなく、待機0時間(0日)と考えられる例があります。
ただしTKTXについては「平均1日・2日」といった共通の目安が確認されていません。成分・使用量・部位・時刻と赤ちゃんの状態を踏まえ、必要に応じて医師・薬剤師へ確認してください。
24時間・48時間という日数に、すべての製品に共通する安全の根拠はありません。
医療用リドカイン製剤には待機不要(0時間)とされる例がある一方、TKTXなどは成分・量・部位が異なれば同じ判断はできません。
LactMedなどの医学資料では、リドカインによる通常の医療使用で授乳中断は不要とされ、待機0時間(0日)と考えられるケースがあります。
ただし「リドカイン配合」という表示だけで全製品が対象になるわけではありません。併用成分、使用量、塗布部位、皮膚の状態も確認してください。
少量・狭い範囲での使用と大量・広範囲の使用では条件が異なります。
授乳中にTKTXなどを使う場合は、少量であっても成分と使用条件を確認し、医師・薬剤師に相談してください。
授乳したことだけで影響が出るとは限りません。
製品名・使用状況・授乳時刻・赤ちゃんの様子を伝えて小児科や薬剤師へ相談し、明らかな異常があれば直ちに救急医療を求めてください。
搾乳して捨てること自体で、体内の薬が早くなくなるわけではありません。
授乳中断や搾乳が必要か、再開時期をいつにするかは使用した薬に応じて医師・薬剤師などと決めましょう。
皮膚で感じる麻酔効果の持続時間と、体内での薬の動きは同じではありません。
感覚が元に戻った時刻だけで授乳再開を決めないでください。
まとめ|授乳再開は日数だけでなく、使った製品と条件を確認する
一般的な目安は、成分が確認された医療用リドカイン製剤の適切な使用では「授乳のための待機0時間・0日(中断不要)」とされるケースがあることです。 乳児が塗布部位の薬に直接触れないことも重要です。
一方、TKTXなどの使用後に「平均24時間」「平均2日」といった共通の待機日数を示せる資料はありません。一律の日数を安全保証として扱わないでください。
使用する製品の成分・量・部位・時間、赤ちゃんの月齢や体調を踏まえ、心配がある場合は事前に医師・薬剤師に相談しておきましょう。
判断に迷う場合は、国立成育医療研究センターの授乳中のお薬相談も利用できます。
参考・確認先
- 米国国立医学図書館 LactMed「Lidocaine」(2024年12月改訂)
- 米国国立医学図書館 LactMed「Prilocaine」(2020年11月改訂)
- The Breastfeeding Network「Local anaesthetics and Breastfeeding」(2019年9月版)
- 英国 emc「EMLA Cream 5% Summary of Product Characteristics」(2026年6月更新)
- PMDA「エムラクリーム 添付文書」(2026年3月改訂)
- FDA「一部の皮膚用鎮痛製品に関する注意喚起」(2024年3月26日)
- 米国国立医学図書館 LactMed「Tattooing」(2021年6月改訂)
- Australian Breastfeeding Association「Tattoos, beauty treatments and breastfeeding」
資料確認日:2026年10月24日。医学一般の成分情報とTKTX個別製品の安全性評価は区別しています。「待機0時間」は該当する医療用製剤で授乳中断が不要という意味であり、全製品の平均値ではありません。
