
タトゥーや刺青の痛みが不安なとき、「麻酔クリームを使いたい」「タトゥーショップで塗ってもらえる?」と考える方もいるでしょう。
ただし、麻酔クリームを使えるかどうかはショップや彫師によって対応が異なり、使用できることを前提に予約するのはおすすめできません。
また、「麻酔クリームならどれでも同じ」「自分で塗って行けば問題ない」と考えるのも適切ではありません。成分や濃度、使用面積、塗布時間、皮膚の状態によっては副作用や全身への影響が生じる可能性があります。
この記事では、タトゥーショップで麻酔クリームの使用を断られる理由、塗布を誰が行うのか、使用前に確認したいポイント、安全面で注意すべきことを整理します。
タトゥーショップで麻酔クリームは使える?
結論として、タトゥーショップで麻酔クリームを使用できるかは店舗ごとに異なります。
持ち込みを認めているショップもあれば、製品を問わず使用を断っているショップ、特定の条件でのみ認めているショップもあります。
そのため、麻酔クリームを使いたい場合は、予約後ではなく施術前の段階でショップへ確認しておくことが重要です。
タトゥー施術と「麻酔」は同じ扱いではない
日本では、2020年の最高裁決定で、医師ではない彫師によるタトゥー施術が医師法上の「医行為」に当たらないと判断された事例があります。
一方、厚生労働省は従来から麻酔行為は医行為に当たるとの考え方を示しています。
そのため、「タトゥーを彫ること」と「麻酔を行うこと」を同じものとして考えることはできません。
特に医療用の局所麻酔薬を、彫師が独自の判断で選択・使用することを前提にするのは避けるべきです。
彫師が麻酔クリームの使用を断る主な理由
麻酔クリームを断る理由は、「麻酔を使うとタトゥーが必ず失敗するから」という単純なものではありません。
主に、皮膚状態、安全性、製品の不確実性、施術方針などを考慮して判断されます。

画像の4項目は代表的な理由です。実際の判断はショップごとの施術方針や、使用する製品・皮膚状態によって異なります。
1.赤み・蒼白・腫れなどで皮膚の見え方が変わることがある
局所麻酔クリームでは、塗布部位に赤み、蒼白、かゆみ、硬結、浮腫などの皮膚反応が起こることがあります。
PMDAの医療用局所麻酔剤「エムラクリーム」の添付文書でも、紅斑・蒼白・潮紅・硬結・そう痒・小水疱・接触皮膚炎・浮腫などが副作用として記載されています。
こうした変化が出ると、彫師が普段と異なる皮膚状態で施術することになるため、使用を好まない彫師がいることは十分考えられます。
ただし、「麻酔クリームを使うとインクが均一に入らなくなる」「インクと化学反応して必ず変色する」といった説明を一般論として断定できる十分な根拠は確認できません。
2.持ち込まれた製品の成分や濃度を確認できない
インターネット上では、さまざまな成分・濃度をうたう麻酔クリームが販売されています。
特に海外製品では、日本で承認された医療用医薬品と同じ品質・表示・安全性が確認されているとは限りません。
ショップ側からすると、成分や濃度、使用量が把握できない製品を施術前に使用されること自体がリスクとなるため、持ち込みを一律に断る方針を取る場合があります。
3.安全管理が難しくなる場合がある
麻酔クリームは「塗るだけだから安全」とは限りません。特に広い範囲・長時間・傷や刺激のある皮膚への使用では、吸収量が増えるおそれがあります。
米国FDAは、タトゥーやレーザー脱毛など美容施術の前後に使用される一部の外用鎮痛製品について、高濃度リドカインを含む製品や、広い範囲への大量塗布、長時間の使用、刺激・損傷した皮膚への使用、被覆によって吸収量が増えるおそれがあると注意喚起しています。
吸収量が増えすぎると、不整脈、けいれん、呼吸障害など重い症状につながる可能性があります。
4.ショップの施術方針や責任範囲に合わない
麻酔クリームを使うと、塗布・待機・除去・洗浄などの工程が追加されます。
また、使用後に皮膚症状が出た場合、タトゥー施術を続行できるか判断が必要になることもあります。
そのため、安全管理や施術手順を統一する目的で、麻酔クリーム自体を使用しない方針にしているショップもあります。
麻酔クリームに期待できることと限界

局所麻酔薬には、皮膚の感覚を一時的に鈍らせ、痛みを感じにくくする作用があります。
そのため、適切な製品を適切な条件で使用した場合、皮膚処置に伴う痛みを軽減できることがあります。
一方で、麻酔クリームを使えばタトゥーの痛みが完全になくなる、と考えるのは適切ではありません。
効果の強さや持続時間には個人差があり、製品の成分、濃度、塗布部位、面積、皮膚状態などによっても変わります。
「痛みが減る=仕上がりが良くなる」とは限らない
痛みが軽減されれば、施術中に体を動かしにくくなるなどの利点が生じる可能性はあります。
ただし、そこから「麻酔クリームを使うほど作品の質が上がる」と一般化することはできません。
仕上がりは、デザイン、部位、皮膚状態、彫師の技術、施術時間、アフターケアなど多くの要素に左右されます。
麻酔クリームの副作用・使用上の注意

局所麻酔薬では、皮膚の赤み、蒼白、かゆみ、腫れ、発疹などが起こる場合があります。
医療用のリドカイン・プロピトカイン配合クリームでは、まれにアナフィラキシー、けいれん、意識障害、メトヘモグロビン血症などの重大な副作用も記載されています。
また、医療用製品には塗布する面積・量・時間・使用できない部位が細かく定められています。
広い範囲への塗りすぎ、必要以上の長時間使用、赤み・かゆみ・腫れなど皮膚トラブルがある状態での使用は避けてください。
「たくさん塗ればよく効く」「長時間置けば効きやすい」と自己判断で量や時間を増やすことは、安全性の面から適切ではありません。体調不良や強い症状がある場合は使用を中止し、医療機関へ相談してください。
麻酔クリームを自分で塗ってからショップへ行けばいい?
ショップが麻酔クリームの使用を認めている場合でも、確認せずに自宅で塗ってから来店するのは避けた方がよいでしょう。
ショップによっては、皮膚の状態を施術前に確認したい、ステンシルを貼る前に完全に除去してほしい、特定の製品は使わないでほしい、といったルールがあります。
また、塗布後に赤みや腫れが出れば、その日の施術を見送る判断が必要になることもあります。使用前は、次の4点を確認しておくと判断しやすくなります。

広い範囲へ使用する場合は使用量も増えるため、面積・量・塗布時間についても製品表示や医療専門家の指示を確認してください。
海外製・個人輸入の麻酔クリームを使う場合の注意
海外製の麻酔クリームには、日本国内で承認されていない製品もあります。
厚生労働省は、医薬品の個人輸入について輸入者本人が自分で使用することを前提としており、個人輸入した医薬品を他人へ販売・譲渡することは認めていません。
また、海外製品では品質、有効性、安全性が日本国内で確認されているとは限らず、個人輸入による健康被害にも注意を呼びかけています。
「海外で販売されている」「タトゥー用と書かれている」というだけで、安全性が保証されるわけではありません。
麻酔クリームを使わずに痛みを抑えるには?

麻酔クリームを使わない方針のショップでも、施術前の準備や施術時間の調整によって負担を減らせる場合があります。
- 前日は十分に睡眠をとる
- 極端な空腹や脱水状態を避ける
- 長時間になりそうな場合は休憩について事前に相談する
- 痛みが強い部位や大きな作品では、複数回に分けられるか相談する
- 体調が悪い日は無理に施術を受けない
また、飲酒や自己判断での薬の追加使用は避け、服用中の薬がある場合は事前に医師・薬剤師・施術者へ確認してください。
Q&A|タトゥーショップと麻酔クリームのよくある疑問
まとめ|麻酔クリームは「ショップ確認」と「安全性確認」が先
タトゥーショップで麻酔クリームを使えるかどうかは、ショップや彫師の方針によって異なります。
麻酔クリームを使いたい場合は、まず施術するショップへ事前に相談し、製品・塗布方法・タイミングまで確認してから判断することが大切です。
また、局所麻酔薬には皮膚の赤みや腫れだけでなく、使用方法によっては重い副作用につながる可能性もあります。
「タトゥー用だから安全」「強い製品ほど効く」「自分で多めに塗ればよい」と判断せず、使用する製品の表示を確認し、不明点があれば医師・薬剤師へ相談してください。
